• 西出 実華

創業100余年 桑名はまぐりの卸問屋 -マルヨシ水産-


三重県桑名市で、大正2年に創業。以来ずっと桑名はまぐりとしじみの2本柱で問屋を営む有限会社マルヨシ水産。はまぐりといえば、桑名はまぐりは知る人ぞ知る逸品だが、その中でもマルヨシ水産が扱うはまぐりは、貝の質が安定しており信頼できると、数々の料理人や飲食店から高い評価を得ている。今日は、はまぐりを愛してやまない次期5代目 水谷 佑樹氏に、溢れ出るはまぐり愛についてお話を伺った。


ー マルヨシ水産さんのはまぐりはおいしい、と聞きますが、ズバリ、目利きはどうやってするんでしょうか?


水谷氏:

実は貝を採る時の扱い方で味が大きく変わるんです。

漁師さんそれぞれが同じ場所で同じ時間かけて採っても、採り方で全然味が違う。

穏やかに優しく、貝のことを考えて採る漁師さんの貝は、貝にストレスを与えることなく、味もいいんです。

僕たちは問屋なので貝を実際に採ることはないんですが、長年の経験でこの漁師さんの採る貝はおいしいというがわかっているんですね。それで、目利きするようにしています。


砂地の貝は色もやわらかく美しい

あとは、外側もチェックします。


採る場所も大切で、浜辺のような砂地で採れる貝は、きれいな肌色や黄色、見た目がスルッとしているものが多いんです。


汽水域(きすいいき)で採れるはまぐりが桑名はまぐり。身が柔らかく、味がマイルド


ー 代々受け継がれてきた目利きの情報がものをいうのですね。「桑名はまぐりはおいしい」と言われますが、他の地域の蛤と何が違うのでしょうか?


水谷氏:桑名はまぐりは、伊勢湾で採れるはまぐりのことを言うのですが、ここは揖斐川、長良川、木曽川の3本の一級河川が注ぎ込んでいる河口になるんですね。伊勢湾の海水と川の水が混ざり合う、汽水域と言われる塩分濃度の薄い水域なんです。 塩分が控えめで、他の海で撮れるはまぐりよりも、身が柔らかくて、味が本当にマイルドです。


はまぐりといえば、三重の他には千葉県と九州が有名ですが、三重以外のはまぐりは荒海で育ったはまぐり。身が締まっていて、貝の外側もとても分厚い。穏やかな環境で生きている桑名はまぐりは貝の外側が薄くて、見た目も全く違います。


千葉のはまぐりを食べていたお客様が三重で桑名はまぐりを食べて、自分が今まで食べていたはまぐりとの違いに驚かれるほどです。


自分も全国各地のはまぐりを食べましたが、桑名はまぐりは格別です!


絶滅の危機を乗り越えた「幻の桑名はまぐり」。地元の皆で大切に守ってきた歴史


ー 「幻の桑名はまぐり」と呼ばれていた時期もあったんですね。



水谷氏:

はい、1950年代からはまぐりの漁獲量が減少し始めて、年間約3000トンあった水揚げが、平成7年に年間800kgまで減りました。この時、地域の漁業関係者が協力しあって、人工孵化の研究して稚貝を放流したり、川をきれいにしたり、漁獲制限をするようになって、今ではやっと年間約200トンまで回復したんです。


ちょうどこの頃私は子どもだったんですが、はまぐりといえばなかなか手に入らない高級品で、全く触らせてもらえなかった記憶がありますね。


蓄養池(ちくよういけ)ではまぐりを更に選別


ー はまぐりの管理方法にもこだわりがあると伺いました。

水谷氏:

はい、はまぐりを仕入れた後、しばらくの間「蓄養池」にはまぐりを放すんです。はまぐりは砂の中に潜る習性があるので、元気なはまぐりは砂の中に潜っていきます。

逆に元気のないはまぐりはそのまま砂の上にいるんですね。どちらも生きているので無駄にはしないです。元気のないものは早めに加工品にしたり、命を無駄なく頂いています。


蓄養池での作業風景


地元マルシェで大評判の加工品。「白だれはまぐり串」

水谷氏が開発した加工品「白だれはまぐり串」は、地元のマルシェで大評判。

桑名でしぐれ煮を製造・販売する「瑞宝志ぐれ」さんの白だれ(白味噌系のタレ)で煮込んでもらい、真空パックにして販売している。

食べる時は蒸し焼きにして食べるのがお勧め。
お酒のつまみにぴったりです。




元気の良いものは天ぷらもおすすめ

はまぐりの天ぷらが大好きだという水谷氏。口に入れるとはまぐりの汁が口いっぱいに広がり、なんとも幸せな気分になるそう。




徹底した安全管理「紫外線殺菌」と地下水を使った砂出し作業


ー 「紫外線殺菌」とはどういうものなのでしょうか?

紫外線殺菌の様子

水谷氏:

なまものなので、お客様に安心して食べていただきたいという思いから、鳥羽浦村の牡蠣屋さんに教えて頂いた「海水を紫外線で殺菌する」という方法を取っています。殺菌しながら、24時間以上かけて砂出しも同時にやっています。

はまぐり屋でやっているところはあまり聞かないですが、これをすることによって、生の状態でも安心してお客様にお出しできています。


排水でメダカが繁殖するほどきれいな地下水


ー 砂出しに地下水を使うのもこだわりのひとつなのですね。


メダカが住みつく排水溝

水谷氏:

はい、しじみも地下水で砂出しをするんですが、はまぐりもしじみも地下水を使うとよく砂をだしてくれます。とてもきれいな地下水で、砂出しをした排水の溝にメダカが繁殖するほどなんです。


はまぐりは自分と同じ桑名市民だと思っている


ー 本当に丁寧にはまぐりを大切に扱っていらっしゃるという印象を受けました。

  水谷さんのはまぐり愛はどこから来ているのでしょうか?


水谷氏:

生まれた頃からはまぐりが大好きなんです。ある時、作業をしていたらはまぐりを落としてしまったことがあったんですが、その時とっさに「ごめん!」って声が出たんですね。

「しまった!」とかじゃなくて、なんでこんな言葉が出たんだろうと、その後考えた時に、「世界は広いけれど、どれだけ広くても桑名でしか採れないもの。自分と同じ場所で暮らす桑名市民なんだ」という考えにいきつきました。


ー マルヨシ水産のおいしさの秘訣がわかったような気がします。


三重の恵みとのコラボ作品「炊き込みごはんの素」に全力を注ぎたい


ー 最後に、今後の展望についてお聞かせ下さい。

水谷氏:

今、三重の恵みさんと開発している「桑名はまぐりとあおさの炊き込みご飯の素」に全力を注ぎたいです。

私、料理人の田中さんが大好きなんです。こんなに熱くて魅力的な人には出会ったことがない。私達のはまぐりへの想いもしっかり受け止めてくれて、その上でおいしい料理に変身させてくれる。

本当に有り難いと思っています。

多くの皆さんに召し上がっていただけることを願っています。


■マルヨシ水産 HP

http://e-maruyosi.com/



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