• 雄一朗 濱地

ー心の流通 ONLINEー 三重の恵みができるまで#0

最終更新: 1月10日

全てはこの一冊「心の流通」から始まった。伊勢すえよし料理人 田中佑樹

本の表紙を開くと、農家や漁師といった1次生産者と私、田中佑樹(以下、田中)の姿が描かれています。


「心の流通」と題したその本は、東京西麻布にある「割烹 伊勢すえよし」で特別に制作したもの。伊勢すえよしの料理人として自ら、三重県各地の生産地を巡り出会った一次生産者との記録です。


ー「料理人として、ただ食材を流通させるのではなく、生産者の想いをお客様に届け、お客様の声を生産者に届けて心を流通させる。」


私が貫き通してきた信念、それが「心の流通」です。


「心の流通」は今回、新たに始動した「三重の恵み」プロジェクトのきっかけにもなりました。今回、そんな「心の流通」をご理解いただくため、これまでの私のこれまでの人生を振り返りお伝えしていきます。


一生に一度の人生。老舗割烹での料理修行後に選択した「挑戦の道」

私は1988年に三重県四日市市に生まれました。割烹料理を営む両親の元で育ちまして、地元の高校を卒業後、服部栄養専門学校へ進学します。そして専門学校卒業後、東京赤坂の「老舗割烹 菊乃井」で4年間の料理修行を積ませていただきました。


転機となったのは菊乃井での料理修行3年目を迎えた2011年の初春。ただがむしゃらに料理の技を磨いてきた私は、


ー「若いうちに一度は世界を巡り、異文化や各地の郷土料理を知りたい。」


という思いを抱いていました。


そんな時、忘れられない出来事が2011年3月11日に起こります。忘れもしない東日本大震災です。当時、まとまった休暇を利用して「世界の異文化と郷土料理を巡る旅」を計画していましたが、震災と重なり中止に。それならば自分にやれることをしようと、3月下旬には炊き出しボランティアとして被災地へ向かっていました。


そこで川を境にして命運を分けた悲惨な光景を目の当たりにし、ボランティア活動をしながら私自身のこれからについて考えを巡らせていました。


ー(人の生死はほんの些細なことで分かれてしまう。一生に一度の人生だからこそ、自分のやりたいことやってみたい。)


炊き出しボランティア後から1年後。下積み修業を終えたタイミングを節目として、私は世界一周 異文化と郷土料理を巡る旅に出ました。


「食は文化」という気づき。そして、たどり着いた信念「心の流通」


醤油と昆布を携えて臨んだ、郷土料理を巡る旅。英語学習でカナダに滞在した後にグアテマラやペルーやアルゼンチン、イタリアなど、15カ国を訪れました。


和食一筋で育ってきた私にとって、はじめて体験する異文化は新鮮そのもの。暑い国では香辛料を使った保存の効く調理が盛んなことや、寒い国では脂肪分の多いものが好まれていることを知ります。気候や風土、収穫物や宗教的な背景など、多種多様な生活がその土地には根付いていました。

また、郷土料理をもっと学ぶため各国のレストランを食べ歩きました。そして、気に入ったお店を見つけては働かせてもらうための交渉に臨みます。もちろん、はじめて訪れる場所でコネもツテも全くありません。電話やメール、直接訪問とできることはやれることは何でもやりました。




100軒以上のアプローチで私を受け入れていただける1軒と巡り合い、最終的には8カ国の厨房に立たせていただけました。各国の料理人たちと厨房を共にし語り合えたことは、私にとって一生の財産です。


旅も終盤に差し掛かった時、私は料理人たちの姿と一人一人の言葉に思いを巡らせていました。すると、表現はそれぞれで違っていたものの、同じことを言っていたことに気づきます。


それは「食は文化」だということです。


その気づきが、私に次の目的を与えてくれました。


ー「生まれ育った三重県の食文化をもっと知りたい。」


帰国してすぐ、私は故郷 三重県の1次生産者を訪ねていました。

実家の和食 すえよしに無事到着
両親と妻に旅で学んだ料理を振る舞う様子

「心の流通」を全ての人に伝えたい。現地を訪れるから見えるもの。

最初に訪れたのは、両親の営む三重県四日市市の和食「すえよし」が取引している白菜や人参、お茶の農家でした。訪問を快く迎え入れてくれた一次生産者から話を伺いながら、私はその土地の空気を感じていました。

現地を訪れるからこそ、厨房ではわからなかったことを肌で体感できます。例えば、一次生産者にとって日々の関心事は、天気ということ。なぜなら、悪天候の場合、収穫などの段取りに支障をきたしてしまうためです。そんな当たり前のことでも、厨房で料理を作っているだけでは見えていなかった視点が一次生産者の元にはありました。そして、私はひとつの決意を固めます。


ー「食材がまな板の上までのるストーリーを知り、そして伝える。」


それが料理人をはじめとして、食に関わる人が持つ使命だという考えを私は持っています。


さらに、知れば知るほど見えてきたのが多種多様な三重県食材の魅力です。私は一次生産者への訪問を続ける中で、自分が作る未来の料理の形が思い浮かんできました。

ー「三重県食材で月替りで懐石料理を提供したい。」

毎月10品を変える場合、年間120品目の食材を必要とします。三重県の食材であれば、実現できるのではないかという思いを、私はお店を持つことで実現します。2015年4月12日に「割烹 伊勢すえよし」を東京西麻布にOPENさせました。


私が伊勢すえよしを無事OPENできたのは、店のコンセプトとなった大切な言葉があったからです。それが、世界を旅して故郷 三重県の生産者を巡ってたどり着いた「心の流通」でした。


ー「料理人として、ただ食材を流通させるのではなく、生産者の想いをお客様に届け、お客様の声を生産者に届けて心を流通させる。」


食のスタート地点に訪れた私にとって一次生産者の皆さんは、場所は離れていてもとても身近に感じています。伊勢すえよしにご来店いただいたお客様にも、私のように三重県や一次生産者の方々を身近に感じてもらいたい。伊勢すえよしの料理は一次生産者のこだわりや思い、ひとつひとつの食材にご説明の言葉をのせて提供しています。故郷三重県や一次生産者の方々を身近に感じていただいた上で召し上がっていただく料理は、より一層美味しいものとなります。

そして、お客様の「美味しい」の言葉を私は一次生産者ひとりひとりにお伝えしています。伊勢すえよしの懐石料理を通じて、お客様と一次生産者の心が繋がっていくことこそ、冒頭で紹介した本にまとめました「心の流通」です。





また、伊勢すえよしの「心の流通」は世界中の方々にお伝えすることも、世界を旅してきた私の思いです。


ベジタリアンやビーガン、グルテンフリー、イスラム教のハラールなど、多様な食文化の人々に対応した懐石料理を伊勢すえよしでは提供しています。その結果として、「トリップアドバイザー 2020年トラベラーズチョイス ベスト・オブ・ザ・ベスト」として、その中で伊勢すえよしは日本の高級レストラン1位、世界の高級レストランで9位を受賞させていただきました。とても有り難いことです。


ここまで私、伊勢すえよし料理人 田中佑樹の人生の振り返りと「心の流通」の物語をご紹介してきました。「心の流通」の物語はこれからも広がり続けていきます。そして、2020年4月に新たに始動した「三重の恵み」プロジェクトに繋がっていきます。

2020年4月7日、新型コロナウイルスの影響で全国各地で緊急事態宣言が発表されました。伊勢すえよしも営業を自粛する中、連日世間を賑わす「行き場を失った食材」のニュース。私は危機感を募らせていました。


ー「今の自分に何かできることはないだろうか。」


まずは現状を知る必要がある、そう思い立ちは私は行動を起こしました。


NEXT. #1 伊勢すえよしの「心の流通」をご自宅に届けたい。三重の恵みへの思い


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