• 雄一朗 濱地

ー心の流通 ONLINEー 三重の恵みができるまで #1 合言葉は「その一口が世界を変える」

最終更新: 1月10日

「三重の、三重による、三重のための」


新プロジェクト「三重の恵み」をはじめるにあたり、私、田中佑樹が最初に浮かべた言葉です。今回はこの場をお借りしまして、「三重の恵み」のはじまりの物語をお伝えしていきます。


「三重の恵み」は新型コロナウイルスによる危機な状況下のもとに仲間が集い、約3ヶ月で一気に形となったプロジェクトです。思い返すと、本来であれば1年以上の時間をかけて作り上がっていくような内容で、それだけ濃すぎるくらいの3ヶ月間でした。


では、一体どのようなきっかけで「三重の恵み」プロジェクトははじまり、そして今に至っているのか?私、伊勢すえよし料理人 田中佑樹の時計の針を2020年4月まで巻き戻します。


私に関しての詳細は前回の記事【#0 ー心の流通 ONLINEー 三重の恵みができるまで#0 全てはこの一冊「心の流通」から始まった。伊勢すえよし料理人 田中佑樹」】をご一読ください。





2020年4月1〜 仲間と意見をぶつけ合って見えてきた未来の提案

新型コロナウイルスの影響で2020年4月7日には緊急事態宣言が全国各地で発令された頃、私は料理人として「行き場の失った食材」に強い危機感を抱いていました。私が経営する東京西麻布 伊勢すえよしも4月1日より休業を余儀なくされ、


故郷の三重県へ帰省し生産者さんの元を訪れたい・・・


そんな願いはもちろん叶わず、そもそも外を出歩くことさえままならない状況です。流通がストップしてしまい混乱する日本社会。全国で「行き場を失った食材」を抱えた生産者さんが危機的状況にあるというニュースが耳に入ってくる度に、料理人として心が痛みました。


こんな鬱蒼とした空気を吹き飛ばしたい。今の自分にできることはなんだろうか。


いてもたってもいられなくなった私は、携帯を取り出し生産者さんに連絡をとりました。生の声を聞いて現状を把握したい、そう考えたからです。


農家さん、畜産農家さん、漁師さん....


約30の生産者さんにご協力をいただいて、刻一刻と変化する状況を把握します。そうすると、今まさに起こっている状況が徐々に見えてきました。

伊勢まだい生簀の様子

それは日常的に食べられているお米や野菜に比べて高級な食材、特にエサを必要とする養殖業などが危機的状況に陥っているということでした。


生産者さんの声をお聞きする一方、時を同じくして今の現状に危機感を抱く仲間同士で意見を交わし続けました。


伊勢 麻吉旅館にて 高柳さん

「三重の恵み」を共同経営する高柳景多さん(以下、高柳さん)もその一人です。高柳さんは私の信念「心の流通」と同様の考えを持ち、2019年7月に一緒に三重を旅をする中で「生産者をヒーローにしたい」という思いをひとつにしました。





写真中央が豊永さん

三重県多気町で先進的な農業に取り組むPomona Farm 豊永翔平(以下、豊永さん)も同じ思いを持つ一人です。


パソコンの画面越しに3人で顔を合わせ、新型コロナウイルスで不安定になっていく世の中の根本的な原因は一体何なのか?、お互いに遠慮なく意見をぶつけ合いました。




ー自分たちの身近な生活圏で食や医療、教育などがもっと循環できるシステムに変わっていかないといけないんじゃないか?地域循環共生圏、小さな単位で経済圏が簡潔している。


ー例えば、遠くから仕入れたレモンを2個で100円で売るとする。CO2の排出している話も、それは結局は人がモノを運ぶことが一番大きい。みんなそれがわかっているけど変えられない。近くで完結していかないといけない。


ー「地域のもの」を「地域のひと」が当たり前のように食べられる様な文化を作りたい。地域の寿命を伸ばして食材の行き場を見つける。足りていないのはデザイン。


そうして、私たちは一つの目標にたどり着きます。


ー地産地消をアップデートさせたい。「その一口が世界を変える」、私たちの目指しているのは「新しいライフスタイル」の提案なんだ。


新型コロナウイルスで浮き彫りになってきたのは、今までの経済の在り方に弱点があったと、自分の頭の中で整理がついてきました。


これまでの経済の仕組みでは、高級食材はお金の動いている場所で消費されていて、地元で消費されるものではなくなっていました。そのため、顔の見えない遠くの誰かに頼ってしまっている状況にあります。


経済活動中心になっている食文化の在り方を変えるのは今しかない。


しかし、コロナで行き場を失った食材を取り巻く状況は待ったなしです。


  • 料理人として、今、何ができるのか。

  • 食材の行き場を見つけるためにどんな選択肢があり、それにはあと何が必要なのか?

  • そして、どの食材から手を付けたらいいのだろうか。


自分のお店も営業自粛で食材をたくさん扱うことはできません。課題は山積みの中で、高柳さんと豊永さんに話を聞いていただきながら、再び各生産者さんに連絡を取りました。


そうして、私たちの中で「三重の恵み」プロジェクトがスタートを切りました。


2020年4月10日〜 出会い、思いは届き、そしてつながっていく

ー新しいライフスタイルを提案のために、行き場を失った食材を提供できる方法を探ろう。


行き場を失っている食材の中でも緊急性の高い業種は、エサを必要とする養殖業です。第1弾は伊勢すえよしの味としても馴染みのある「伊勢まだい」で商品開発に取り組むことに決定しました。しかし、すぐに大きな壁が立ちはだかります。


伊勢まだいの加工場をどうするのか?


「三重の恵み」として、食材だけでなく加工場も三重県の事業者さんにお願いしたいという思いがありました。しかし、「伊勢まだい」を加工できるなどの条件が揃った加工場がすぐに見つかる訳もなく、常にアンテナを張りながら探し続けていました。

そんな時、伊勢まだいの生産者 友栄水産の橋本純さん(以下、純さん)から「オンライン捌き教室をするから見においでよ。」とお誘いを受けます。そして、高柳さんとオンライン捌き教室を見学をさせていただたことをきっかけに運命的な出会いを果たしたのが、伊勢志摩冷凍の石川 隆将さん(以下、石川さん)でした。


伊勢志摩冷凍は友栄水産から約1時間でアクセスできる場所にあり、HACCP対応の加工場で瞬間凍結させる技術を持たれていました。


純さん、石川さん、高柳さんと私の4人でZOOMで顔を合わせる機会を作ると、三重の恵みプロジェクトが一気に形となっていきました。

左上:田中、右上:高柳さん、左下:純さん、右下:石川さん

鯛しゃぶ、鯛茶漬け、鯛ユッケ。伊勢まだいで伊勢すえよしの味を商品化するアイデアや方法が次々と出てきました。そんな中、伊勢まだいを瞬間冷凍する料理人としての初の試みに、自分たちの舌で確かめておきたいポイントが見つかりました。


田中「お店で使うお刺身は、熟成時間が料理人のこだわりじゃないですか。刺身の弾力と、旨みのバランスをどこにするのかという話ですよね。それでもし、冷凍によって時を止められるなら、熟成時間も指定させてもらうはできませんか?そんな事をやってるところを聞いた事ないですけど、できないですかね?」


「僕ん所と石川くんは近いからできるね。」


石川「やってみよっか。」


田中「じゃあ冷凍で時を止めた場合のベストな熟成時間探し、ぜひやってみたいです!」

伊勢まだい

それからすぐに、12時間・18時間・24時間・30時間・48時間の熟成時間でのタイミングで瞬間冷凍して味見をする実験を重ねていきました。


その結果、12時間前に〆て急速冷凍をかけた伊勢まだいをお客様にお届けすることが、旨味・食感ともに最も美味しいという結論を導き出します。さらに刺身の厚みや、1切れの大きさ、皮の加工の実験を重ねて鯛の切り身の味を完成させていきました。

味を完成させることと並行して商品パッケージや、ロゴデザイン、販売の方法、ストーリーの伝え方など、毎夜の21時〜24時頃に約2週間、何度も何度もミーティングを重ね続けていきました。


2020年7月 「三重の恵み」公開。第1弾 伊勢まだいのかぶせ茶漬け販売を開始

そして、約3ヶ月。

  • 素晴らしい環境とこだわりの餌で生産されている、橋本純さんの伊勢まだい。

  • 刺身に切って5分後にはマイナス60度となる、石川隆将さんの時を止める魔法。

  • 香りを一気に引き立てる、カネウフーズさんにしか出せない極上あおさのりの旨味。

  • 味の奥行きとまろやかさを加える、九鬼産業さんの濃厚な練り胡麻。

  • 最後の一口まで美味しく食べ続けられる、マルシゲ清水製茶さんのかぶせ茶の絶妙な後味と苦味。


怒涛の勢いの中、たくさんの思いが一つになって「伊勢まだいのかぶせ茶漬け」が完成します。三重県食材にこだわる伊勢すえよしの味をご自宅で楽しんでいただける自信作です。


三重県は美味しい食材の宝庫で、まだまだ知られていません。


ー三重県にはこだわりをもった生産者さんがたくさんいる、そんな食材と料理人で化学反応を起こしたい


そんな私の思いを「三重の恵み」には詰め込んでいます。


私の続けてきた信念「心の流通」が新たな形となり、スタートをきった三重の恵み。真の意味で循環する社会の実現に向けて、まだまだはじまったばかりです。


ー僕らの目指す新しいライフスタイルの提案「その一口が世界を変える」。




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